法人税減税は成長戦略として有効か?

安倍政権の成長戦略に法人税減税があります。
これについて考えてみました。 法人税減税に
関するロイターに掲載されたコラムの内容
(2014/6/25:Andy Mukherjee氏http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0F00LO20140625)
を見てみましょう。

・法人実効税率は現在36%
・数年で29%に引き下げ
・財源は明示なし

以上が政府の発表内容に関することです。
以下が現状に関することです。

・1/3の企業は(赤字で)法人税の支払いなし
・大手複合企業の実効税率は13%
・繰延損失制度の活用で納税額抑制
・ロイターの最近の企業幹部への調査結果
国内設備投資増加効果は限定的
内部留保を強く選好

以上がロイターコラムの概要で、結論として
法人税減税に疑問を呈していました。
(ロイターコラムは成長戦略より財政問題に
焦点を当てていましたが、成長戦略から話が
ズレているので、その部分は割愛します)

今回の法人税減税は企業に残るお金を増やし、
「国内設備投資を増加」させることが狙いです。
しかし、需要が縮小している日本では、利益を
増加させる見込みが小さいため、大手企業は
国内投資より、内部留保を選ぶ傾向が続いて
います。

次に中小企業について見てみましょう。
中小企業庁の発表によると2012年現在の
日本の中小企業は

日本企業数 386万社
中小企業・小規模事業者数 385万社
中小企業・小規模事業者の割合 99.7%

従業員数 4,614万人
中小企業従業員 3,217万人
中小企業従業員割合 69.7%

日本企業はほとんどが中小企業で、従業員の
7割を占めており、雇用の主役は大企業ではなく、
中小企業です。
その経営状況は、国税庁の2011年法人税
申告状況によると以下の通りです。

法人数 297.7万件(平成24年6月現在)
申告法人数 276.3万件
黒字割合 25.9% (つまり赤字割合は74.1%)

日本経済の中心の中小企業の7割以上が
赤字ということです。

法人減税は利益を出している大手企業には
利益を増やすチャンスできますが、7割以上いる
赤字の中小企業には全くメリットがありません。

むしろ、財源確保で何らかの負担が増加した場合、
標準外形課税、中小企業向け減税措置の廃止等
が実施されると、むしろ逆効果でしょう。

効果的な成長戦略は、7割以上いる赤字の中小企業
の黒字化戦略でしょう。赤字企業が減ると雇用改善
と所得増加に結び付き、日本経済のメインエンジン
の消費(GDPの6割)に火が付きます。

GDP世界第3位の日本経済の消費が動き出すと
なれば、他国のグローバル企業は儲ける機会を
求めて日本へ進出して来ると思います。

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ところで、日本政府とは逆に、欧米では、大手
グローバル企業のタックスヘブンを利用した
課税逃れが問題となっています。
課税逃れに対する民衆の反発は強く、英国では
スターバックスがボイコット運動を受け、自主的に
2千万ポンド(約26億円)納税をしました。
(日経2012/12/7付け記事)

何がフェアなのかを基本に据え、経済の実態に則した
効果的な成長戦略が必要と思います。

<参考>
中小企業基本法第2条で定められた定義
中小企業(従業員数・資本金規模)
・製造業・その他:300人以下または3億円以下
・卸売業:100人以下または1億円以下
・小売業:50人以下または5,000万円以下
・サービス業:100人以下または5,000万円以下

小規模事業者(従業員数)
・製造業・その他:20人以下
・商業・サービス業:5人以下

※パートも従業員としてカウントします。
※アルバイトは「解雇の予告を必要とする」
契約なら 従業員としてカウントします。
仕事の度に雇うような場合は従業員
としてカウント しません。

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